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勇気ある質問

 先日、小生が携わっている月刊誌に掲載するために、俳人の黒田杏子先生とドイツ文学者、エッセイストの池内紀先生との対談をお願いしました。お話のテーマは、「書き文字のぬくもり」です。ワープロ、携帯の普及で、昨今、私たちは直筆文字を書く機会が次第に少なくなっています。
 
 更に、縦書きから横書きへ、文字表記も変わりつつあります。直筆文字が少なくなり、横書き文化に移行したとき、現代人はどんな状況を迎えるのでしょうか?
 結論から先に書きますと、両先生、大変示唆深い、興味深いをしていただきました。掲載号は12月1日に発行になりますので、一般店頭で手にとって、拝読いただければ幸いです。
 http://www.tokaiedu.co.jp/bosei/

 今回の話の眼目は、これからです。
 楽しい対談が終わって雑談になりました。某新聞のカルチャー教室で長年、俳句を教えられている黒田先生がこんな話をされました。
 
 最近の女性受講生のなかには、披講の際に、まったく先生から採られなかった生徒が「なぜ私の句を採られなかったのか、その理由を教えてください」と詰問するケースがあるというのです。この「勇気ある質問」に私は大笑いをしました。
 
 私も句会に出席して、自信を持って自作を発表したのに、主宰に歯牙にもかけられない場面が続くと、つい私も「なぜ私の句を採られなかったのか、その理由を教えてください」と言いたくなるのは事実です。ただし、芸事の世界にはレベルというものがあり、そのレベルに達していない者は、問題にされないという、厳しい暗黙の掟がるように思います。
 
 世間では、なんでも疑問を持てば忌憚無く質問すればよいという雰囲気があり、それは積極的な生き方の印だと思われているようですが、芸事の世界には、質問をするには、それなりの技術(レベルの)資格があるように思います。そのことが分からないで――自分の実力を省みないで、安直に質問をする者はヤボというものでしょう。
 
 その女性受講者はいわゆる“勝ち組”なのだそうです。夫は一流企業の役員、息子は東大を出た――一家が積極的に生き、自信を持って努力してきた結果、いま将来には何も不安はない地位を得た。さあ、時間と金が余ったので、俳句でも勉強しよう。受講料は支払っている。なぜ質問を遠慮しなくてはならないのか、彼女には分からないようです。
 
 その俳句教室で教えている男性講師になかには、「なぜ私の句を採られなかったのか、その理由を教えてください」というリクエストに応えている方もおられるそうです。いまこの種のカルチャー教室の受講者の数が減っているようです。営業上、「なぜ、採られなかったか」答えてくれる講師は、主催者側でも、ウエルカムのようです。
 
 しかし黒田先生は、佳句は「なぜよいか」とコメント出来ても、俗に言う「悪い句」は、なぜ悪いのかコメントしようがない。私はそういう環境で育ってきたとのこと。もし、先生に自作のコメントをして欲しいならば、個人的に密かに努力して早く自分のレベルを挙げよ、それまで密かに自分の腕を磨けということだと思います。私が句会で「勇気ある質問」が出来ない理由です。

 実は、その某新聞のカルチャー教室で指導されている黒田、金子兜太両先生の「1日集中俳句教室」が11月23日にありますので、私は参加の予定です。2句先に提出しており、提出者全員に披講してもらえるそうです。


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