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楕円球の季節③―アイデンティティを刺激する

 本日、12月4日、国立で行われた早明ラグビーを観戦してきました。
 試合はご承知の通り、40:3、早稲田の順当勝ちでした。
 
 ラグビーのおもしろいところは、まず番狂わせの少ないこと。春のオープン戦で負けたら、本番でもまず、そのチームに勝つことがないことです。
 
 また一度、ある一定のレベルまでチームの実力をあげると、なかなか低下しないこと。即ち、連勝、連覇となりやすいことでしょう。
 いまの早稲田は、そのリズムに乗っていますので、このチームを敗る学校は、まず2、3年の間はないと思います。他の学校は、自分の実力を上げながら、栄枯必衰、早稲田の自滅を待つしか手はないでしょう。(笑い)
 
 学生スポーツを応援していて思うことは、まずこのリズムを読む楽しさを覚えることだと思います。毎年、卒業生が出ていき、新入生が入ってます。即ち名選手でも4年間しか在籍できないのです。その次々に交替していく選手たちの集団が、毎年、いかに強いチームに仕上がっているかを観る、これが学生スポーツ醍醐味だと思います。
 
 そして、自分の贔屓のチームが勝ったときは、勿論、嬉しく思いますが、ああ、今年もいい試合を見せて貰ったなあ、と思います。この試合を――同時刻に、同場所で共有した選手(選手にとっては、各試合が文字通り、それ1回しかない貴重な人生の刻印であるはずです)、観客に、ちょっと大袈裟ですが、感謝のエールを発したくなります。かって漱石が、名人・円朝と同時代に生き合わせた幸福を語ったように……。
 
 ラグビーのもう一つの特長は、アイデンティティを刺激することです。小生はたまたま明治の卒業生ですので、明治を応援していますが、その年に勝とうが負けようが、丁度、阪神ファンが成績にかかわらず終生応援が変わらないように、明治を静かに応援しています。あの激しい「ルールのある格闘技」が、人間の骨肉のどこか静かに眠る闘争心、帰属意識などをくすぐるのだと思われます。
(いませっかく社会人のトップリーグでは、レベルの高い、拮抗した好試合を展開しているのですが、観客数がもう一つ伸びません。小生も社会人の試合は年1-2回観るくらいで、特定のチームを応援することはありません。社会人の試合はなぜかアイデンティを刺激しないのです)
 
 それゆえ、ラグビーだけには、試合が終わったら敵味方なくお互いを讃え合う“ノーサイドの精神”がうたわれていますが、実際は、一部には贔屓の引き倒しの言辞があるように思われます。
 サイトにはラグビーの掲示板がいくつかありますが、負けた相手を罵詈雑言、やっつけている場面を多くみます。特に、世界大会などで大敗した監督への悪口などは、人間の悪意の極限まで尽くした雑言で、気分を悪くします。

 明治の故北島監督は、勝利監督インタビューで、まず「今日はいい試合が出来てよかった」と言い、「早稲田もいいチームでした。なかなか勝たせてくれません」と相手を敬意をもって誉め「今日は、両チームともいいプレーをしたので、お客さんは喜んでくれたと思います。試合に先立ち、選手たちには練習どおりやれ、と指示しました。だって練習以上のことは出来ないのですから……」と、たまたま今日は運良くわがチームが勝ったというような口調でおっしゃっていました。

 その謙虚さに、勝ったチームを応援した者としては、もっと自分のチームを自慢したらよいのにと思ったくらいでした。北島監督の勝利監督インタビューはいつもワン・パターンでしたが、春の微風のようにさわやかでした。長年、勝ったり負けたりしながら、これからも続くであろうライバルへのエール及びいたわりのこころがありました。敵を誉めてわが武勇というところでしょうか。
 
 それに比較すると、いまの若い世代の「勝利監督インタビュー」は、いかにも「おれおれ」で、鼻白むがこと多いですね。北島監督をお手本として、今日の「勝利監督インタビュー」は、どんな内容が飛び出すか確かめるのもおもしろいと思います。

 蛇足ながら、ラグビーとサッカーを比較します。
 サッカーの長所は、ルールが簡単なので大衆性がある、そして、なかなか得点が入らない――それゆえに、つねに同点、逆転される危機感があり、ゲーム終了まで、スリリングである。ラグビーは、その反対。ルールがサッカーと比較すると複雑である。即ち専門的、エリート的雰囲気がある。が、ルールが解ればその専門的、エリート的雰囲気ゆえに味わいが深い。即ちアイデンティティを鋭く刺激します。点数は、1回ごとの点が大きく、サッカーに比べて得点機会が多い。即ち、実力差が点差に直接反映しやすい。実力差のある試合では、点差が開きすぎて緊張感に欠ける試合になりやすいと思われます。
 
 明治ラグビーとのつきあいは悲喜こもごも、たくさんありますが、おいおいということで……。 


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SPRING

>自分の実力を上げながら、栄枯必衰、早稲田の自滅を待つしか手はないでしょう。
まったくの同感ですね。笑
by SPRING (2005-12-05 21:37) 

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